必ず5分後に咳が出る社長 か
朝食に出てくる『黒い紙』は? 海苔(のり) み
馬糞(ばふん)を名乗るもヒトに喰われるウニ み
配偶者のを先に 還付申告 み
ボクもキミもクロッカスが好きだった み
ビビるな、たかが三茱臾(さんしゅゆ)の花の下 み
『淡雪』は舌に乗せると無重力 み
『受験生』階級にもう一年か が
右耳を左手で触る霜焼(しもやけ) ま
薄氷(うすらい)に寒波の空が歪(ゆが)み照る み
消炭をヒトの形と炉に並べ み
戸の隙間 朝日の軌跡 蝉氷(せみごおり) み
「初春(はつはる)や…」 無用の用ね、文字の列 み
清流の岩陰や稚魚が春待つ み
どこから剥(は)がれ来た「立春大吉」 み
いつ撒(ま)いた豆かを知らず掃除機の み
地震(ない)の寒(かん)、『かもしれない』の悔(く)いと居(い)る み <能登半島地震から一か月>
隣の子がビャーと走る春隣(はるとなり) み
枯庭の掃出し窓に訪問者 み
機関車の肌はヌルッと暾(とん)に霜 み
空風(からかぜ)の音のせぬ夜は不完全 み
ブチブチと枯桑(かれくわ)が刺す鬱(うつ)の雲 の
割り箸がヘンに割れたぞ、おでん喰う み
望郷の念が燻(くす)ぶる寒落暉(かんらっき) み
母の一歩にのしかかる冬の霧 み
湯々婆(ゆたんぽ)をオシャレに売るの六本木 み
断片化した記憶で嗅ぐ早梅(そうばい) み
焼鳥を5本買う。ちょっと温(あたた)か み
トイレから夜の街へ響け嚏(くしゃみ) み
半端に残った大根、風呂吹きに み