冷房

新橋のこの位置は弱冷房車 み

菖蒲園

クリーム色の電車で菖蒲園へ み

自由席で柿の葉鮓(すし)をパクッと み

白靴

白靴を尾行して駅で撒かれた み

立夏

踏切の警報や立夏のホーム み

風光る

風光る京浜急行は飛ばす み

風雪

特急は風雪に耐え夜が明ける み

朱欒

網棚はもう網でなく朱欒(ざぼん)置く み

電車待つ脹脛(ふくらはぎ)、蚊の刺され痕 み

夏至

鉄橋を貨物列車が夏至の朝 み

ごきぶり

端っこの席へススッとゴキブリや み

短夜

短夜(みじかよ)や初電の運転手の髯(ひげ) み

地下鉄の2番出口は空に花 み

花見

花見の帰り、電車待つ間の自省 か

朝寝

朝寝して言い訳はダイヤ改正 か

機関車の肌はヌルッと暾(とん)に霜 み

冱つ

冱(い)つる駅、途方に暮れる時刻表 み

鬼洗い

鬼洗いに列車は黙して止まる み

冬の空

駅舎出てゴチャゴチャ消えて冬の空 み

寒し

5路線の踏切(ふみきり)渡る世は寒し み

熊手

大熊手(おおくまで)揺れて瞬断(しゅんだん)銀座線 み

新蕎麦

乗継ぎの寸暇(すんか)に新蕎麦(しんそば)を啜(すす)る み

行楽の秋

行違(ゆきちが)う特急は行楽の秋 み

爽やか

特急のドアがプシュと開(あ)き爽やか み

黄昏、夜業

黄昏(たそがれ)に夜業(やぎょう)へ父は保線員 み

炎ゆ(もゆ)、浜木綿の花

炎(も)える鉄路、潮風、浜木綿の花 み

席を譲られた。電車の窓に虹 み

躑躅

誰が世話して躑躅(つつじ)咲く無人駅 み

子雀

子雀が米粒つつく操車場 み

豚饅

忽(たちま)ちに豚饅(ぶたまん)が車両を支配 み