桜蘂降る(さくらしべふる)

桜蘂(さくらしべ)が赤くなる。もう散りどき み

プリムラ

プリムラが咲く フーガを練習する み

チューリップ

チューリップ一本だけでは何だか み

八重桜

八重桜 「おのぼりやす」 「おくだりやす」 み

蒲公英

蒲公英(たんぽぽ)に曖昧さ足す朝日影 み

山笑う

山笑う、そろそろ歯医者に行くべき み

春霞

屋根屋根のブルーシートに春霞 み

椿

薄暗い六畳 掛け花に椿 み

佐保姫

サポートセンタの親切な佐保姫(さほひめ) み

草摘む

草摘んで尻餅ついてキャアキャアと み

山吹、春驟雨

山吹の色の帯なら春驟雨 ま

夜桜

銀座で迷い、夜桜の写真展 み

花疲れ

幻を愛してしまう花疲れ み

椀の蓋 急がば回せ 蜆汁(しじみじる) み

新入生

新入生、人体模型を倒す み

菜の花

菜の花をコップに挿して遅い昼 み

四月

四月から日曜始まりの手帳 み

地下鉄の2番出口は空に花 み

四月馬鹿

日めくりの格言の横「四月馬鹿」 み

花見

花見の帰り、電車待つ間の自省 か

コート脱ぐ

コート脱ぎエスカレータにポッと乗る み

黄沙

指を擦り合わせばスベスベと黄沙(こうさ) み

春の夢

抽斗(ひきだし)を開けたけど、はて? 春の夢 み

花の陰

花の陰、席の準備あるが無人 み

花の宴

勝手に♯(しゃーぷ)を取られた 花の宴♪ み <作曲者の瀧廉太郎の没後、山田耕筰が編曲で♯を削除>

春の昼

「太陽」を「大腸」と読む春の昼 み

夜半の春

ルールルル 騒ぐ者あり 夜半の春 み

父と歩くつもりだった母の春 み

春の朝

8時間また齢をとる春の朝 み

春の雲

ベランダにタオルが飛ぶよ春の雲 み