青すだれ朝の日射しに匂い蒸す み
彼(か)の地の麦秋(むぎあき) 空の青と穂の黄 み
養蜂(ようほう)の箱が並(なら)べば李(すもも)咲き み
ガス抜きか…食材に載る『アスパラ』よ み
ロベリアにどちらが蝶か花弁(はなびら)か み
お焦げあり筍飯(たけのこめし)の艶(つや)やかさ み
鈴蘭の純でもあり鈍でもあり み
アマリリス、力(ちから)の誇示を哀れむや み
豆ごはん炊ける頃合いビール出せ み
ヒヤシンス、根が支配するガラスの世 み
パンジー見るやロールシャッハテストに み
ベランダで吾(あ)の悪口を雀の子 み
ワイシャツの背の汗ぞ春終わりける み
馬酔木(あせび)折っても花を誰にか見せむ み
春蝉がとまるセータ女子高生 み
亀鳴くか 本当(ほんと)は何が 鳴いたのか み
一面の菜の花や無想の平和 み
桃の花、雨を伝ひて空に色 み
飛び込めば柔(やわ)かろう ネモフィラの『海』 み
再会の桜蘂降(さくらしべふ)る夜ノ森に み <2022年、立ち入り規制緩和>
木それぞれ事情のあらむ春落葉 み
春雨(はるさめ)に赤い傘借りる躊(ためら)い み
春の日に絵葉書届き移住知る み
春の蚊か気配探れば耳鳴りよ み
蟹釣れば 護岸は薄暮(はくぼ) 三番瀬 み
春陰(しゅんいん)には桃色牡丹の紬(つむぎ) ま
稚鮎(ちあゆ)放流に『自然』を考える み
下痢止めの香(か)も芳(かぐわ)し紙風船 み
向日葵(ひまわり)の群れこちら見る北の窓 み
波風(なみかぜ)に耐え 弘法麦(こうぼうむぎ)の花穂(はなほ) み