師走。黄ばんだ写真、黄ばんだ記憶 み
枯蘆(かれあし)が騒いだので窓を閉めた み
ペコペコ社長の景気は大熊手 み
黄色の蛍光ペンで塗る金糸魚(いとより) み
セロリを齧(かじ)る 何かが浄(きよ)められる み
鯛焼の包み紙のひかる匂い み
末枯(うらがれ)は最上階の窓際に み
白菜は芯から喰えと豆知識 み
鴨たちよ、みんなでそっちへ行くんか み
長葱(ながねぎ)はレジ袋から街を見る み
カーブミラーに鶲(ひたき)は影を見るか み
屠場(とじょう)の上に高層ビルの小春 み
麦飯(むぎめし)と季節違いの薯蕷汁(とろろじる) み
表面は沸騰するも芯は冷ゆ み
夕日照るビルのガラスに帰り花 み
畑から脱走したか茶の花よ の
この頃は客人はなし敷松葉 み
雨の舗道は銀杏落葉(いちょうおちば)に滑る み
露寒(つゆざむ)やさっき見たのは何だろう み
群時雨(むらしぐれ)、我が町の名はひらがなに み
柘榴(ざくろ)をブロック塀へフォーシームや み
サンルームに冬浅く眠り老いる み
頭から食べて柳葉魚(ししゃも)の尾が残る み
伴走のロープが緩む秋惜しむ み
引いた牛蒡(ごぼう)を銃口に詰めてやれ み
夜霧にハイビームの影はマドロス み
やや寒し、今日は頭が回らぬ日 み
秋深き5時にコミュニティバスを待つ み
AI(えいあい)に真理を託す文化の日 み
脚注に言い訳のある『星月夜』 み