堅雪に地熱の穴か水蒸気 み
ガラス戸に朝が来たかや雪明り み
初夢や斜めに動くエレベータ み
隣戸の室外機が喘(あえ)ぐ暖房 み
日向ぼこの指南を誰に頼もう み
自動ドアが開(あ)く 冬の雲が割(わ)れる み
更地になれば想いは薄れ秋気 み
天国は庇(ひさし)もなくて秋暑し み
物臭(ものぐさ)が窓を開ける敬老の日 み
山を切り宅地を作り震災忌 み
ブラインドの隙から目を射る西日 み
日盛りにATMの外も列 み
ドアスコープから晩夏の光る空 み
朝焼けの雲が高層ビルの窓 み
ビル群が川に飛び込む熱帯夜 み
吊り橋のワイヤーが刻む夕焼け み
街灯が点(つ)くをためらう夏夕べ み
屋上に庭園があり百合の花 み
春雨に傘を窄(すぼ)め擦れあう路地 み
フェンスの裂け目をくぐって春の泥 み
風の丘を登れば焼野(やけの)の匂い み
完璧な舗装道路だが薄氷(うすらい) み
跡地で春を待つ 校歌をハミング み
靴痕が靴痕のまま霜の朝 み
囲炉裏(いろり)の灰を火箸(ひばし)でなぞる迷路 み
落葉カサッカササ 振り返り誰何(すいか) み
屠場(とじょう)の上に高層ビルの小春 み
夕日照るビルのガラスに帰り花 み
雨の舗道は銀杏落葉(いちょうおちば)に滑る み
秋風にナットが錆びた観覧車 み