昭和や、おせちもいいけどカレーもね み
厨房の裏手に外套の男 み
クリスマスは昭和の銀座がよろし み
煮魚の鍋を放置で煮凝りに み
電柱の裏に蜘蛛の囲(くものい)がある朝 み
夜店に騙(だま)されてヒヨコを三匹 み
日焼けに白く残る紐の結び目 み
お化け煙突を数えメロンを喰う み
カーバイドが臭う大花火(だいはなび)の宵 み
崑(こん)ちゃんがミルクセーキを飲んでいる み
電柱とグラジオラスが写る町 み
居酒屋でウミガメのタマゴを食べた み
ブラウン管テレビは雛を飾れた み
餡入りの草餅は焼き網の痕 み
シュプレヒコールの軋(きし)みに銀杏散(いちょうち)る み
通学路の邪魔な茱萸(ぐみ)の枝を折る み
西日射し食器を包む新聞紙 み
黒塀に『尋ね猫』貼る浴衣の子 み
水温(みずぬる)む、かと思わせる洗面器 み
戸の隙間 朝日の軌跡 蝉氷(せみごおり) み
いつ撒(ま)いた豆かを知らず掃除機の み
六等星まで見えてたあの霜夜(しもよ) み
初釜は火傷(やけど)しそうな缶コーヒ み
大熊手(おおくまで)揺れて瞬断(しゅんだん)銀座線 み
遊べ遊べ、秋宵(しゅうしょう)のチャイムなんか み
祖母の干し柿のホコリ、拭うべきか み
黄昏(たそがれ)に夜業(やぎょう)へ父は保線員 み
鬼灯(ほうずき)の実をプチュと赤き唇(くちびる) み
「コレガ盆だんすデスカ?」 ちょちょんがちょん み
夏座敷、鼠も猫も通り抜け み