水温(みずぬる)む、かと思わせる洗面器 み
戸の隙間 朝日の軌跡 蝉氷(せみごおり) み
いつ撒(ま)いた豆かを知らず掃除機の み
六等星まで見えてたあの霜夜(しもよ) み
初釜は火傷(やけど)しそうな缶コーヒ み
大熊手(おおくまで)揺れて瞬断(しゅんだん)銀座線 み
遊べ遊べ、秋宵(しゅうしょう)のチャイムなんか み
祖母の干し柿のホコリ、拭うべきか み
黄昏(たそがれ)に夜業(やぎょう)へ父は保線員 み
鬼灯(ほうずき)の実をプチュと赤き唇(くちびる) み
「コレガ盆だんすデスカ?」 ちょちょんがちょん み
夏座敷、鼠も猫も通り抜け み
焚き付けを扇(あお)げば魔人(まじん)出る団扇(うちわ) み
このブランコを大回転させたね み
子雀が米粒つつく操車場 み
実家にて遅日(ちじつ)の退屈くつくつ み
着膨れの我慢大会25℃ み
塾帰り、うっかり無灯火の月夜 が
薄墨(うすずみ)のササと席画に庭の菊 み
遠浅(とおあさ)へ竿振り鱚(きす)釣る父と子 み
青臭いトマトは醤油または塩 み
この一番(いちばん)に出す車前(おおばこ)は手負い み
「君は誘蛾灯(ゆうがとう)」 なにそれ意味不明 ま
夏夕べ欠伸(あくび)指南(しなん)の屋形船 み
銭湯へ遠花火(とおはなび)背に二人乗り み
渦(うず)分けるとき折れる蚊取線香 み
風鈴屋台(ふうりんやたい)にカオス降臨せり み
『素麺(そうめん)』か 『冷麦(ひやむぎ)』か 色付きの有無 み
たどり着く機械室の強冷房 み
夏至夜風、石段下る下駄の音 ま