着膨れの我慢大会25℃ み
塾帰り、うっかり無灯火の月夜 が
薄墨(うすずみ)のササと席画に庭の菊 み
遠浅(とおあさ)へ竿振り鱚(きす)釣る父と子 み
青臭いトマトは醤油または塩 み
この一番(いちばん)に出す車前(おおばこ)は手負い み
「君は誘蛾灯(ゆうがとう)」 なにそれ意味不明 ま
夏夕べ欠伸(あくび)指南(しなん)の屋形船 み
銭湯へ遠花火(とおはなび)背に二人乗り み
渦(うず)分けるとき折れる蚊取線香 み
風鈴屋台(ふうりんやたい)にカオス降臨せり み
『素麺(そうめん)』か 『冷麦(ひやむぎ)』か 色付きの有無 み
たどり着く機械室の強冷房 み
夏至夜風、石段下る下駄の音 ま
扇風機のボタンを足で押す嫁 ま
線路傍(ばた)の蓬(よもぎ) 草餅に入れた? み
笹笛を折ろうとして指を切った み
谷空木(たにうつぎ)、髪に飾れる早乙女(さおとめ)の の
田起しに何故(なぜ)この石はここにある の
下痢止めの香(か)も芳(かぐわ)し紙風船 み
誰何(すいか)して鯉口(こいぐち)を切る春の闇 じ
綾取(あやと)りのマジックに指触れ初(そ)めぬ み
薄氷(うすらい)割り剥がし それっ手裏剣(しゅりけん)だ み
紙切り名人 紅梅(こうばい)に白梅(はくばい) み
雪見障子の座敷で お好み焼き み
引込線(ひきこみせん)の無蓋車(むがいしゃ)も白雪(しらゆき)に み
寒雷(かんらい)に震える夜汽車、大晦日 み
コッコココ 寒卵(かんたまご) まだ温(あった)かい み
ラジオの曲 慌(あわ)てメモる 古暦(ふるごよみ) み
河豚(ふぐ)の煮凝(にこご)り 舌に電気が走る み