湯畑の煙が竦(すく)む炎天下 み
強引に雨の季節に七夕よ み
幕電(まくでん)か、暗雲が金塊と化す み
ドームなら梅雨晴れ待たずホームラン み
ドップラー効果去り行く梅雨(つゆ)のカフェ み
係柱(けいちゅう)に片足、あれか蜃気楼(しんきろう) み
四月から日曜始まりの手帳 み
指を擦り合わせばスベスベと黄沙(こうさ) み
薄氷(うすらい)に寒波の空が歪(ゆが)み照る み
六等星まで見えてたあの霜夜(しもよ) み
爪半分が紫色の冬日(ふゆび) み
びしょ濡れで言い訳は何? 白驟雨(はくしゅうう) み
星月夜、乳の匂いの白い風 み
音もなく狂う台風、二重窓 み
婆さんの髪掻き乱し初嵐 み
熱帯夜、ランナーひとり靄(もや)の中 み
巨樹を背に梅雨(ばいう)の雫(しずく)が手にある み
なぜこれが『名残の雪』とわかるのか み
桜前線にそわそわ。ジャパニーズ! み
綿雪か…漆(うるし)の椀に受けてみよ み
冴返(さえかえ)る、『三寒四温』の裏切り み
灯台を仰ぐ遥かに冬銀河 み
冬北斗、撮らば社内報に寄稿 か
寒気 今季一番 五日連続 み
太陽の丸さが怖い寒落暉(かんらっき) み
天狼(てんろう)に導かれ 砂漠を四駆(よんく) み
月虹(げっこう)か二十三夜の滝裏に み
「降っとる?」 「降っとらん」 それは 片時雨(かたしぐれ) み
月面に地球の影や赤銅(しゃくどう)の み
「流星や」 指さしても 誰もいない み