電線が緊張している寒天(かんてん) み
極楽から送達された初雪 み
井戸はなく釣瓶もないが日の落ちる み
引っ掻けば中身が覗く鰯雲 み
予定の日は台風。誠に遺憾 み
神経の網を縮(ちぢ)らせる稲妻 み
夕立の壁を押しても反作用 み
何故そこに煉瓦を置く。酷暑続く み
ビル群が川に飛び込む熱帯夜 み
ただ、氷河時代の終わりが来ている み
「いま何時(なんじ)?」 「今日は夏至」 噛み合わぬ愛 み
梅雨寒に揺れる千鳥の氷旗(こおりばた) み
ひとつづつ片付いてゆき菜種梅雨 み
裏木戸に閂(かんぬき)を掛け桜まじ み
大陸の北東の三寒四温 み
慎ましく雪の結晶は六角 み
富士の影、釣瓶落しの五六(ごろく)秒 み
剃刀(かみそり)の刃の如き秋雨を行く み
秋日和にも紫外線は降る降る み
屑(くず)でも塵(ちり)でも星は清く流れ み
強風にあたたたたと二百十日 み
湯畑の煙が竦(すく)む炎天下 み
強引に雨の季節に七夕よ み
幕電(まくでん)か、暗雲が金塊と化す み
ドームなら梅雨晴れ待たずホームラン み
ドップラー効果去り行く梅雨(つゆ)のカフェ み
係柱(けいちゅう)に片足、あれか蜃気楼(しんきろう) み
四月から日曜始まりの手帳 み
指を擦り合わせばスベスベと黄沙(こうさ) み
薄氷(うすらい)に寒波の空が歪(ゆが)み照る み