雪折れの枝のささくれ胸裏(きょうり)見え み
寒椿(かんつばき) 一輪挿して 仕方なし み
浜のアロエの花に蜜吸うメジロ み
水仙活けて 空気清浄機かな み
葉牡丹(はぼたん)を剣山(けんざん)に刺す指冷た み
末枯(うらが)れや枝を離れれば自由よ み
冬薔薇に路地(ろじ)迷い込み他人(ひと)の家 み
右近(うこん)の橘(たちばな)黄ばむ。熱燗(あつかん)かな み
川面(かわも)に散る紅葉(もみじ)、と見れば初雪 み
クレマチス 夏の季語なの 冬咲きも み
ジャカランダの花に良き風の都 み
「ほらここ」と指さす人や帰り花 み
古火山(こかざん)の岩肌 燃える草紅葉(くさもみじ) や
天高き皇帝ダリアは見下(みくだ)す み
山々は錦繡(きんしゅう) 街は秋時雨(あきしぐれ) み
菊人形、追いかけてきそうでイヤ み
緋毛氈(ひもうせん)に寝っ転がって観楓(かんぷう) み
椰子(やし)の実の落ちて凹(へこ)みのメルセデス み
庁舎前、銀杏(ぎんなん)拾う定年後 み
薄墨(うすずみ)のササと席画に庭の菊 み
仁清(にんせい)の皿にうつれる初紅葉 み
嵯峨野線を渡って竹春(ちくしゅん)に入(い)る み
父の吊忍(つりしのぶ)、軒下にそのまま み
雷鳴や浮葉(うきは)の雫(しずく)ブルッとな み
この一番(いちばん)に出す車前(おおばこ)は手負い み
瓢箪(ひょうたん)や中身不用の実を結び の
凌霄(のうぜん)の花敷く径(みち)に其はあやか み
四時に起こされた。『蓮見(はすみ)』というらしい み
綿柎開(わたのはなしべひら)き巻雲(けんうん)を吐く み
花園の向こう 父の口は『ヘ』の字 み