蘇鉄の花、蝶

南国の蝶が巣くう蘇鉄の花 み

敗荷、祭

敗荷(やれはす)に祭の密集の残滓(ざんし) み

夕顔の実、干瓢剥く

夕顔に実が干瓢(かんぴょう)となる波乱 み

麝香草

それほどの香りもせずに麝香草(じゃこうそう) み

紫苑

不在時に存在を知る。紫苑(しおん)咲く み

一葉、蟻

側溝(そっこう)に一葉(ひとは)流れて蟻の舟 み

桔梗

本名は『桔梗(ききょう)』というの美青年 み

炎ゆ(もゆ)、浜木綿の花

炎(も)える鉄路、潮風、浜木綿の花 み

向日葵

墓標を読め みな若者 向日葵(ひまわり)よ み

避暑

調べるな その花の名は 避暑の宿 み

古代蓮(こだいはす)

見に行こうよ、古代ハス、咲いてるって み

朝顔

朝顔や、三日前なら買(こ)うたのに み

百合の花(ゆりのはな)

お見舞いに百合(ゆり)はダメよと念押され み

紫陽花

紫陽花(あじさい)の接写に秘術の霧吹き み

夕若葉

病室に窓の光は夕若葉 み

ガーベラ

夜半(やはん)まで紅ガーベラの熱放射(ねつほうしゃ) み

渓蓀、杜若、花菖蒲

あやめ、かきつばた、はなしょうぶ。いづれか み

アカシアの花

ニセモノのほうが上、アカシアの花 み

ルピナス

ルピナスの白植えたはずピンク咲く み

五月、薔薇

五月の吐息(といき)を引っ掻く薔薇(ばら)の棘(とげ) み

金鳳花

讒言(ざんげん)の風が波打つ金鳳花(きんぽうげ) み

牡丹

撮ろうにも完璧なのはなく牡丹 み

罌粟の花(けしのはな)

アスファルトから罌粟(けし)伸びて赤い花 み

躑躅

誰が世話して躑躅(つつじ)咲く無人駅 み

踏青(とうせい)

亜麻色の髪の乙女と青を踏む み

春雨、檀香梅

春雨や檀香梅(だんこうばい)とすれ違う み

葉桜、毛虫

葉桜の陰は毛虫に注意やで み

蓬(よもぎ)に殺菌作用 父の教え み

紫雲英、蜂

参道に蜂の群れあり紫雲英(げんげ)咲く み

夜桜

夜桜の写真に白い影がいる み