南国の蝶が巣くう蘇鉄の花 み
敗荷(やれはす)に祭の密集の残滓(ざんし) み
夕顔に実が干瓢(かんぴょう)となる波乱 み
それほどの香りもせずに麝香草(じゃこうそう) み
不在時に存在を知る。紫苑(しおん)咲く み
側溝(そっこう)に一葉(ひとは)流れて蟻の舟 み
本名は『桔梗(ききょう)』というの美青年 み
炎(も)える鉄路、潮風、浜木綿の花 み
墓標を読め みな若者 向日葵(ひまわり)よ み
調べるな その花の名は 避暑の宿 み
見に行こうよ、古代ハス、咲いてるって み
朝顔や、三日前なら買(こ)うたのに み
お見舞いに百合(ゆり)はダメよと念押され み
紫陽花(あじさい)の接写に秘術の霧吹き み
病室に窓の光は夕若葉 み
夜半(やはん)まで紅ガーベラの熱放射(ねつほうしゃ) み
あやめ、かきつばた、はなしょうぶ。いづれか み
ニセモノのほうが上、アカシアの花 み
ルピナスの白植えたはずピンク咲く み
五月の吐息(といき)を引っ掻く薔薇(ばら)の棘(とげ) み
讒言(ざんげん)の風が波打つ金鳳花(きんぽうげ) み
撮ろうにも完璧なのはなく牡丹 み
アスファルトから罌粟(けし)伸びて赤い花 み
誰が世話して躑躅(つつじ)咲く無人駅 み
亜麻色の髪の乙女と青を踏む み
春雨や檀香梅(だんこうばい)とすれ違う み
葉桜の陰は毛虫に注意やで み
蓬(よもぎ)に殺菌作用 父の教え み
参道に蜂の群れあり紫雲英(げんげ)咲く み
夜桜の写真に白い影がいる み