枝垂桜

枝垂桜(しだれざくら)を天蓋(てんがい)に寝転(ねころ)がれ み

三椏の花(みつまたのはな)

三椏(みつまた)の花(はな)のブローチを吾妹(わぎも)に み

地獄の釜の蓋

博士(はかせ):「これが『地獄の釜の蓋』じゃっ!」 み

蕗の花(ふきのはな)

平等や公平が好き蕗(ふき)の花(はな) み

カトレア、薊(あざみ)

カトレアの証言、覆(くつがえ)すアザミ み

幣辛夷

あの坂を登っていくと幣辛夷(しでこぶし) み

クロッカス

ボクもキミもクロッカスが好きだった み

三茱臾の花(さんしゅゆのはな)

ビビるな、たかが三茱臾(さんしゅゆ)の花の下 み

冬木

レントゲン写真の如く冬木(ふゆき)折れ み

冬薔薇

平穏の日々を乱すな冬薔薇(ふゆそうび) み

冬萌(ふゆもえ)

冬萌(ふゆも)えやヘンな空気で誰か来る み

落葉

見渡すまで落葉、大地は枯れたか み

枇杷の花

手をつなぐぐらいでいいか枇杷の花 み

黄落

子らの自転車、黄落(こうらく)を撒き飛ばせ み

新松子

新松子(しんちぢり)、投げよと捥(も)いだ手の臭(にお)い み

サフランの花

サフランの花を見て想うラ・マンチャ み

木犀

木犀(もくせい)は故人が好きだったそうだ み

鶏頭(けいとう)

ケイトウを鶏冠(とさか)に譬(たと)えたひとの智 み

木の実(このみ)

木の実5個で祖父の眼鏡と交換 み

蘇鉄の花、蝶

南国の蝶が巣くう蘇鉄の花 み

敗荷、祭

敗荷(やれはす)に祭の密集の残滓(ざんし) み

夕顔の実、干瓢剥く

夕顔に実が干瓢(かんぴょう)となる波乱 み

麝香草

それほどの香りもせずに麝香草(じゃこうそう) み

紫苑

不在時に存在を知る。紫苑(しおん)咲く み

鬼灯

鬼灯(ほうずき)の実をプチュと赤き唇(くちびる) み

向日葵

墓標を読め みな若者 向日葵(ひまわり)よ み

古代蓮(こだいはす)

見に行こうよ、古代ハス、咲いてるって み

朝顔

朝顔や、三日前なら買(こ)うたのに み

百合の花(ゆりのはな)

お見舞いに百合(ゆり)はダメよと念押され み

紫陽花

紫陽花(あじさい)の接写に秘術の霧吹き み