枝垂桜(しだれざくら)を天蓋(てんがい)に寝転(ねころ)がれ み
三椏(みつまた)の花(はな)のブローチを吾妹(わぎも)に み
博士(はかせ):「これが『地獄の釜の蓋』じゃっ!」 み
平等や公平が好き蕗(ふき)の花(はな) み
カトレアの証言、覆(くつがえ)すアザミ み
あの坂を登っていくと幣辛夷(しでこぶし) み
ボクもキミもクロッカスが好きだった み
ビビるな、たかが三茱臾(さんしゅゆ)の花の下 み
レントゲン写真の如く冬木(ふゆき)折れ み
平穏の日々を乱すな冬薔薇(ふゆそうび) み
冬萌(ふゆも)えやヘンな空気で誰か来る み
見渡すまで落葉、大地は枯れたか み
手をつなぐぐらいでいいか枇杷の花 み
子らの自転車、黄落(こうらく)を撒き飛ばせ み
新松子(しんちぢり)、投げよと捥(も)いだ手の臭(にお)い み
サフランの花を見て想うラ・マンチャ み
木犀(もくせい)は故人が好きだったそうだ み
ケイトウを鶏冠(とさか)に譬(たと)えたひとの智 み
木の実5個で祖父の眼鏡と交換 み
南国の蝶が巣くう蘇鉄の花 み
敗荷(やれはす)に祭の密集の残滓(ざんし) み
夕顔に実が干瓢(かんぴょう)となる波乱 み
それほどの香りもせずに麝香草(じゃこうそう) み
不在時に存在を知る。紫苑(しおん)咲く み
鬼灯(ほうずき)の実をプチュと赤き唇(くちびる) み
墓標を読め みな若者 向日葵(ひまわり)よ み
見に行こうよ、古代ハス、咲いてるって み
朝顔や、三日前なら買(こ)うたのに み
お見舞いに百合(ゆり)はダメよと念押され み
紫陽花(あじさい)の接写に秘術の霧吹き み