あの橋を渡れば全て麗(うら)らかな み
ボクもキミもクロッカスが好きだった み
『冬のリビエラ』を聴く。日本語ラジオ み
雪暗(ゆきぐれ)に寺の燈(ひ)か無調の諷経(ふぎん) み
チューニングずれたギターで年忘れ み
住職かジングルベルのハミングは み
ティンパニー、練習室にひとり。冴(さ)ゆ み
咳、ざわつき、譜面めくり、ジョン・ケージ み
新婦の『秋桜(こすもす)』のアカペラに泣いた み
赤とんぼ♪のイントネーションを自慢 み
「コレガ盆だんすデスカ?」 ちょちょんがちょん み
『石狩挽歌』を聴く。ヤン衆帰る み
小夜啼鳥(さよなきどり)の不協和音の余白 み
春の闇にトランペットの弱音 み
12月深し、レコードに針(はり)置く み
いま言うか そのサヨウナラ 落葉風 み
秋空や真空中を落ちる羽根 み
小鳥来てオーブル街にユートピア み
レコード盤、出品前に曝書(ばくしょ)す み
8月はイングランドにいるという み
夏の朝、砂漠に希望の暗雲 み
「田植唄」と書かれたカセットテープ の
勝者のごと全て持ち去れ白鳥 み
サトウハチローに騙(だま)され『おひなさま』 み
その曲は関係ないよマイファニー み
絃(げん)切れる刹那(せつな)の終止音 冴(さ)える み
君が来る前の日に 街は大雪(おおゆき) み
1月の河にカーニバルが迫る み <2022年、今年のパレードは4月に延期>
凍玻璃(いてはり)が盤渉調(ばんしきちょう)に共振し み
ラジオの曲 慌(あわ)てメモる 古暦(ふるごよみ) み