行間に妄想を埋める寒弾(かんびき) み
目を閉じて雪月夜かなドレミソラ み
霧深く蒼きノクターンのラジオ み
夜中にバルトークが鳴る夏の果 み
冬の月と歩く林道の浄夜(じょうや) み
「フロイデ」で目が覚めた ごめんね第九 み
チェロケースはヴィオラケースよりも秋 み
その曲がまた現実味、原爆忌 み
その歌を聴いた記憶に泣く。残花 み
プリムラが咲く フーガを練習する み
幻を愛してしまう花疲れ み
勝手に♯(しゃーぷ)を取られた 花の宴♪ み <作曲者の瀧廉太郎の没後、山田耕筰が編曲で♯を削除>
ルールルル 騒ぐ者あり 夜半の春 み
あの橋を渡れば全て麗(うら)らかな み
ボクもキミもクロッカスが好きだった み
『冬のリビエラ』を聴く。日本語ラジオ み
雪暗(ゆきぐれ)に寺の燈(ひ)か無調の諷経(ふぎん) み
チューニングずれたギターで年忘れ み
住職かジングルベルのハミングは み
ティンパニー、練習室にひとり。冴(さ)ゆ み
咳、ざわつき、譜面めくり、ジョン・ケージ み
新婦の『秋桜(こすもす)』のアカペラに泣いた み
赤とんぼ♪のイントネーションを自慢 み
「コレガ盆だんすデスカ?」 ちょちょんがちょん み
『石狩挽歌』を聴く。ヤン衆帰る み
小夜啼鳥(さよなきどり)の不協和音の余白 み
春の闇にトランペットの弱音 み
12月深し、レコードに針(はり)置く み
いま言うか そのサヨウナラ 落葉風 み
秋空や真空中を落ちる羽根 み