職質を受け寒柝(かんたく)が身分証 み
皿を洗う音を聞いてる蟋蟀(こおろぎ) み
梨を齧(かじ)る、シャコ 林檎を齧(かじ)る、シャコ み
螽蟖(きりぎりす)にも音痴はいる。笑うな み
大花火のフィナーレ、気づく空腹 み
江戸風鈴 ペアグラス 木端微塵(こっぱみじん) み
空風(からかぜ)の音のせぬ夜は不完全 み
トイレから夜の街へ響け嚏(くしゃみ) み
滝の音(おと)とか 子らの声(こえ)とか 和(なご)む み
脚立(きゃたつ)あり、上で剪定(せんてい)のシャキシャキ み
逡(ためら)いなく薄氷(うすらい)に踵(かかと)落とし み
釜の湯がぶつぶつ言(ゆ)うて足袋(たび)を脱ぐ ま
かじかんで ちょろいトレモロ ララッララ み
ボイラーの報知機がなる寮の冬 が
雪掻(ゆきか)きのシャベル コンクリにシャガッラ み
雪風巻(ゆきしま)き 鷗啼(かもめな)く High F♯(はいえふしゃーぷ) み
椎(しい)の実をオカリナに詰めたのは誰(だれ) み
雷鳴や浮葉(うきは)の雫(しずく)ブルッとな み
歩(ほ)を止(と)めて 昼の月 稽古(けいこ)の囃子(はやし) み
風鈴屋台(ふうりんやたい)にカオス降臨せり み
夏至夜風、石段下る下駄の音 ま
ロト当たり夜半(よわ)に口笛(くちぶえ)ヘビ誘う み
夏空に轟音 車輪出た機体 み
春の蚊か気配探れば耳鳴りよ み
追いかけて下駄を滑らす彼岸時化(ひがんじけ) ま
消防車の二点鐘(にてんしょう)の間(ま)に安堵 み
寒柝(かんたく)を湯船で聞く 贅沢なり み
初湯のぽたり 30(さんじゅう)BPM(びいぴいえむ) み
鐘凍る 耳あて透る高周波 み
霰(あられ)踏む下駄の音(おと)去りてゆく朝 ま