空風

空風(からかぜ)の音のせぬ夜は不完全 み

トイレから夜の街へ響け嚏(くしゃみ) み

滝の音(おと)とか 子らの声(こえ)とか 和(なご)む み

剪定

脚立(きゃたつ)あり、上で剪定(せんてい)のシャキシャキ み

薄氷

逡(ためら)いなく薄氷(うすらい)に踵(かかと)落とし み

足袋

釜の湯がぶつぶつ言(ゆ)うて足袋(たび)を脱ぐ ま

悴む(かじかむ)

かじかんで ちょろいトレモロ ララッララ み

ボイラーの報知機がなる寮の冬 が

雪掻

雪掻(ゆきか)きのシャベル コンクリにシャガッラ み

雪風巻(ゆきしまき)

雪風巻(ゆきしま)き 鷗啼(かもめな)く High F♯(はいえふしゃーぷ) み

椎の実

椎(しい)の実をオカリナに詰めたのは誰(だれ) み

雷鳴、浮葉

雷鳴や浮葉(うきは)の雫(しずく)ブルッとな み

昼の月

歩(ほ)を止(と)めて 昼の月 稽古(けいこ)の囃子(はやし) み

風鈴

風鈴屋台(ふうりんやたい)にカオス降臨せり み

夏至夜風

夏至夜風、石段下る下駄の音 ま

ロト当たり夜半(よわ)に口笛(くちぶえ)ヘビ誘う み

夏の空

夏空に轟音 車輪出た機体 み

春の蚊

春の蚊か気配探れば耳鳴りよ み

彼岸時化

追いかけて下駄を滑らす彼岸時化(ひがんじけ) ま

消防車

消防車の二点鐘(にてんしょう)の間(ま)に安堵 み

寒柝

寒柝(かんたく)を湯船で聞く 贅沢なり み

初湯

初湯のぽたり 30(さんじゅう)BPM(びいぴいえむ) み

鐘氷る、耳あて

鐘凍る 耳あて透る高周波 み

霰(あられ)踏む下駄の音(おと)去りてゆく朝 ま

食事室 咳の連鎖の あ々可笑(おか)し み

鹿威し、水琴窟

「あれは『水琴窟(すいきんくつ)』」 「これは『鹿威(ししおど)し』」 み

菊の香と 砂利の足音 黙礼す み

どんかん祭

<2021年、神幸式大祭はコロナ禍のため一部規模縮小> 女(をんな)、追ひきて どんかん祭(まつり)に遇(あ)う じ

蜩(ひぐらし)を聞いた気がする自習室 み

冷水機

学食の冷水機 ブーンブウーン が