香烟(こうえん)のゆるり昇りゆく炎天(えんてん) み
地層見る。夕立晴れてゲオスミン み
青すだれ朝の日射しに匂い蒸す み
下痢止めの香(か)も芳(かぐわ)し紙風船 み
柚子の香が月も包めり露天風呂 み
客人の頷(うなづ)くを見る敷松葉 み
牡丹焚火(ぼたんたきび)に背を炙る 二刀流 じ
叔父のジャンパー着た 煙草の匂いだ み
菊の香と 砂利の足音 黙礼す み
線香花火、怖い 柄の端を持つ み
<2021年COVID-19拡大中、回想でよむ> 異国の夜(よ) 香辛料と 祭(まつり)の音(ね) み
グラスに 苦味、馥郁(ふくいく) IPA(あいぴいえい) み
隣席の香水、苦痛 歌劇場 み
これがその万葉の香ぞ浜木綿(はまゆう)の み
青葉折る 指に残りし香の微(かす)か み
落雁(らくがん)の味なき味に麦の香よ み
若駒(わかごま) 厩舎(きゅうしゃ)に戻り 汗、鼻息 み
変心の夜の香 覆(おお)はむ沈丁花(じんちょうげ) み
<2021年2月 COVID-19流行下によむ> シャーレのクロッカス 日々嗅いで安堵 み
みなべ町 香り僅かに 早梅よ み