春の昼

「太陽」を「大腸」と読む春の昼 み

夜半の春

ルールルル 騒ぐ者あり 夜半の春 み

父と歩くつもりだった母の春 み

春の朝

8時間また齢をとる春の朝 み

春の雲

ベランダにタオルが飛ぶよ春の雲 み

年度末

年度末、社内報は最終号 か

写生中に蝶が群がって邪魔よ み

朝寝

朝寝して言い訳はダイヤ改正 か

暖か

捨てるものが決まれば暖かくなる み

麗らか

あの橋を渡れば全て麗(うら)らかな み

春の風邪

筋肉痛(きんにくつう)が来る 春の風邪が来る み

春休み

約束の「こんど」はいつか、春休み が

春の闇

部屋着のまま駅へ行く。春の闇に み

水温む

水温(みずぬる)む、かと思わせる洗面器 み

朝雲雀

石垣を昇って天守、朝雲雀(あさひばり) み

合格

合格のご褒美は自分で買うね が

雪雫(ゆきしずく)

撫肩(なでがた)の空き瓶に雪(ゆき)の雫(しずく)を み

卒業証書

スポッて筒の中は卒業証書 が

枝垂桜

枝垂桜(しだれざくら)を天蓋(てんがい)に寝転(ねころ)がれ み

三椏の花(みつまたのはな)

三椏(みつまた)の花(はな)のブローチを吾妹(わぎも)に み

韮(にら)を洗うと緑が溶け出てきた み

雛あられ

喉元にイガイガがあり雛あられ み

地獄の釜の蓋

博士(はかせ):「これが『地獄の釜の蓋』じゃっ!」 み

春の泥

不便だが不幸ではない春の泥 み

蕗の花(ふきのはな)

平等や公平が好き蕗(ふき)の花(はな) み

二月

請求書が来てすぐに終わる二月 み

春苺

春苺(はるいちご)を弁当に入れてやろう み

鬢長(びんなが)、トンボ

「トンボの刺身だよ」 「羊羹(ようかん)みたいね」 み

カトレア、薊(あざみ)

カトレアの証言、覆(くつがえ)すアザミ み

雪月夜

稜線(りょうせん)が朦朧(もうろう)と立つ雪月夜 み