自販機の上に手袋の片方 み
脱いだ足袋(たび)が邪魔なので足蹴(あしげ)にした み
冴返り写真のひとの目が赤い み
袖口をひとつ捲って春隣 み
「見せるから信用しろ」と雪女 み
厨房の裏手に外套の男 み
重ね着や脱いでも脱いでも脱いでも み
税関で何を隠し持つ着ぶくれ み
うそ寒やダウンベストが椅子の背に み
日焼けに白く残る紐の結び目 み
静謐(せいひつ)なる二の腕は触れて涼し み
逆光が羅(うすもの)を貫(ぬ)き肌の影 み
明智小五郎は猛暑日でも背広 み
夏痩せに期待しているあと2キロ み
横に並び、追い抜く、夏帯のひと み
担任の『チビT(ちびてぃい)』を見た夏休み が
夕凪や前髪が長かったのね み
瞬(まばた)くは羽根扇子(はねせんす)かな美女柳(びじょやなぎ) み
一億の日傘が歩く埋立地 み
清々し衣更えして聖橋 み
白靴を尾行して駅で撒かれた み
急坂を上る夏服らの校歌 み
母の日の忘れ物かな試着室 み
お似合いと言われて微妙な春服 み
衿(えり)もとの釦(ぼたん)を留める春の風 み
芍薬(しゃくやく)の浴衣も湯ざめして嚏(くしゃみ) み
非難をものともせず毛皮で歩く み
おねえさん、コートのベルト垂れてます み
時は止められない セーターは伸びる み
うわさの猪(い)の目のイヤリングの魔除け み