耳朶(みみたぶ)を風擦(す)りてゆく今朝の冬 み
ハロウィンの魔女の鎖骨の寒々し み
秋の夜に B級ホラー 『それ』は『あれ』 み
待宵(まつよい)に 「なぜ行くの」 「苦しいからさ」 み
地方紙に絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)載る9月 み
夏祭り、微笑むお面に無防備 み
夏、書くこと多いと短い日記 が
七夕(たなばた)に短冊(たんざく)読んで事実知る み
花の日を分かち合う普通の子たち み
梅雨(つゆ)。オフィス無人に傘立て満杯 み
花の宴、無知と無能は無罪とす み <2022年、今年も花見宴会はNG>
春や フレンチネイル 部長は女性 か
4月はじまりの手帳買う。就職 か
干さんでいいのに 母、羽根布団(はねぶとん)干す み
雪濁(ゆきにご)り再会の日も遠からじ み
春炬燵(はるこたつ) 布団の柄は 杜若(かきつばた) み
斑雪山(はだれやま)見て買う馬券決める朝 み
薄氷(うすらい)割り剥がし それっ手裏剣(しゅりけん)だ み
春燈(しゅんとう)に残雪の陰(かげ)は誘惑 み
ジーランドの鴨が守銭奴(しゅせんど)を嗤(わら)う か
春巡り来るも大器晩成(たいきばんせい)せず み
「暖かくなれば」と、いつもの言い訳 み
松過ぎても「休(やすみ)」でよい齢(とし) になり み
背もたれて君を待つブロック冷た み
お年玉 母に渡すが 『往(い)って来(こ)い』 み <回想でよむ。2022年正月はコロナ感染警戒で母には会わず。>
消えぬる傷も消えぬ傷も埋火(うずみび) み
境内(けいだい)に漂う クリスマス準備 み
冬ざれや破綻は運命の仕様 み
5歩で来る 5歩で去る 師走の歩幅 み
当時知る者は呆れる冬景色 み