行(ゆ)く秋(あき)の孤独は雑踏に居場所 み
赤い羽根、フランス人に道訊かれ み
秋の夕、空・山・田の三段染 み
日曜のアニメ終われば休暇明け か
本名は『桔梗(ききょう)』というの美青年 み
帰省の目的は エアコンの掃除 み
八月や歴史は韻を踏むのかと み
新橋の赤ら顔らの夏の果 か
お利息は法定内よ氷菓子(こおりがし) み
線香花火(せんこはなび)と燃え落ちる隠し事 み
プール→アイス→昼寝 子らが羨(うらや)まし み
怒ってる? なに怒ってる? 鼻に汗 み
母の日や でも何をすればよいのか み
公園の蛇口上向(うえむ)き風光る み
初給与、明細メールを転送 か
春夕(しゅんせき)やチェアリングが流行(はや)る理由(りゆう) み
春愁(しゅんしゅう)はどんくらいかな泣かないで み
清明(せいめい)。昨日(きのう)のつづきの今日(きょう)を行く み
初出社、遅刻の訳は春疾風(はるはやて) か
入社式、仕立てスーツの春暑し か
地下駐車場、課長待つ間の余寒 か
『美の広場』に 愚者が集い 春は死す み
バレンタインの日とは気づかず 闊歩(かっぽ) み
避寒地(ひかんち)を探し地球儀(ちきゅうぎ)廻す指 み
煙突の白煙は水、冬空に み
寒風が痛い。褒め言葉が痛い み
そのキズも思い出と見て年明ける み
形なきモノも壊(こわ)れて年の暮れ み
冬のドラマの会話(かいわ)が噛み合わない み
耳朶(みみたぶ)を風擦(す)りてゆく今朝の冬 み