干さんでいいのに 母、羽根布団(はねぶとん)干す み
雪濁(ゆきにご)り再会の日も遠からじ み
春炬燵(はるこたつ) 布団の柄は 杜若(かきつばた) み
斑雪山(はだれやま)見て買う馬券決める朝 み
薄氷(うすらい)割り剥がし それっ手裏剣(しゅりけん)だ み
春燈(しゅんとう)に残雪の陰(かげ)は誘惑 み
「暖かくなれば」と、いつもの言い訳 み
背もたれて君を待つブロック冷た み
消えぬる傷も消えぬ傷も埋火(うずみび) み
「40℃(よんじゅうど)」 言うより暑い 40℃(よんじゅうど) み
炎天下 マイクロ波に焼かれるごと み
効き過ぎの冷房救う鱧(はも)の椀 み
皹(ひび)に息 幾度挑む 指認証 み